大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所大法廷 昭和29年(あ)787号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人亀井一万の上告趣意について。

原判決の是認する第一審判決は、本件被告人の行為として、被告人は昭和二七年五月一一日施行の長崎県下県郡鶏知町長選挙に際し、候補者俵亀寿について判示のような同人の当選に有利な事項を掲載した被告人の印刷にかかる同年同月一〇日附新聞中外新報三百部を、翌一一日午前八時頃鶏知町大字鶏知白江橋附近道路上において、氏名不詳の三名に手交し、同人等をして同町内に頒布せしめた旨の事実を認定し、原判決はこの事実に基き、同新聞紙のこのような頒布方法は公職選挙法一四八条二項にいう通常の方法で頒布したことにならないと判断したのであって、その判断は相当であり違法とは認められない。そして公職選挙法一四八条二項は、選挙の公正を期するに必要な限度において、新聞紙又は雑誌を選挙運動に使用する方法を規制するに過ぎないのであるから、原審が右判示のような場合を右法条にいう通常の頒布方法でないという解釈をとったからといって、所論のように憲法二一条にいう出版及び表現の自由の保障に違反するものとはいえない。従って論旨は採用できない。

その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 真野毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例